サムスン電子株式会社は、大韓民国の多国籍企業であり、韓国水原市に本社を置く。1969年に設立され、スマートフォン、テレビ、家電製品などの消費者向け電子機器に加え、半導体、イメージセンサー、ディスプレイなどの電子部品を製造する大手メーカーである。同社は、特にメモリーチップの生産と人工知能アプリケーションを支えるファウンドリーサービスにおいて、世界のテクノロジー産業の主要プレーヤーである。
サムスン電子は、サムスングループの中核企業であり、2012年時点でグループ収益の約70%を占めている。2012年以降、世界最大のスマートフォン販売企業であり、2006年以降、世界最大のテレビメーカーでもある。半導体分野では、世界最大のメモリーチップメーカーであり、2017年から2018年にかけて、インテルを上回り、一時的に売上高で世界最大の半導体企業となった。同社は76カ国に組立工場と販売網を展開し、26万人以上の従業員を雇用している。
初期の歴史と設立
サムスン電機工業は、1969年1月13日に水原市で、肥料や甘味料の取引で知られていたサムスングループの産業部門として設立された。技術と資源が不足していたため、サムスンは三洋電機や日本電気などの日本企業と提携し、世論の反発にもかかわらず協力関係を築いた。1969年12月には、三洋電機と住友商事との合弁会社であるサムスン三洋電機が設立され、テレビ、電卓、冷蔵庫などの初期製品を生産した。また、1970年には、家電製品やAV機器を製造するための別の合弁会社であるサムスン日本電気が設立され、後にサムスンSDIとなった。1981年までに、サムスン電機は1000万台以上の白黒テレビを製造した。
1974年、サムスングループは経営難に陥っていた半導体メーカーである韓国半導体を買収し、後に韓国通信と合併してサムスン半導体通信を設立した。1983年2月、創業者である李秉喆は「東京宣言」を発表し、サムスンがDRAMベンダーになることを宣言した。1年以内に、サムスンは64kb DRAMを開発し、大手企業との技術格差を縮めた。1988年、サムスン電機工業はサムスン半導体通信と合併し、サムスン電子となった。
部品製造とデザイン戦略
1980年代後半から1990年代前半にかけて、サムスンの携帯電話の売上は低迷し、韓国市場ではモトローラが支配的だった。李健熙会長は戦略を転換し、業績の悪い製品ラインを棚上げし、他社向けの部品の設計と製造に注力することを決定した。この垂直統合戦略は、ソニーに挑戦するための10年計画と相まって、サムスンの技術的専門知識の獲得に貢献した。1996年、李会長は「デザイン革命の年」を宣言し、競争資産としてのサムスンのデザイン能力構築を目指した。これは後にブランド成功に寄与した。
半導体とメモリーのリーダーシップ
サムスン電子は、DRAMやNANDフラッシュを含む半導体メモリーの世界最大のメーカーである。2010年代には、データセンターにおける生成AIのトレーニングと推論に不可欠な高帯域幅メモリー(HBM)の主要生産者となった。同社はまた、AMD、クアルコム、アップルなどの顧客向けにチップを製造するファウンドリー事業も展開している。2017年、サムスンは一時的にインテルを抜いて売上高で世界最大の半導体企業となり、インテルが数十年にわたって保持していた地位を奪った。ファウンドリー部門とメモリー部門は、AWS Trainiumやその他のAIアクセラレーター向けのコンポーネントを提供する、AIハードウェアサプライチェーンにおけるサムスンの役割の中心である。
モバイルと消費者向け電子機器
サムスンのGalaxyブランドには、フラッグシップモデルのGalaxy Sシリーズ、ミッドレンジのGalaxy Aシリーズ、低価格帯のGalaxy Mシリーズ、そしてGalaxy FoldやGalaxy Flipなどのプレミアム折りたたみデバイスが含まれる。同社は、Galaxy Noteシリーズでファブレットというフォームファクターを開拓した。サムスンはまた、Galaxy Tab AやTab Sシリーズなどのタブレットも製造しており、2006年以降、世界最大のテレビメーカーである。関連するソフトウェアとサービスには、Samsung PayやTV Plusが含まれる。同社はホテル向けテレビやスタジアム・会場向けディスプレイを供給し、洗濯機、冷蔵庫、コンピューターモニター、サウンドバーの主要ベンダーでもある。
GalaxyデバイスへのAI統合
サムスンは、カメラ機能の強化、音声アシスタント、生産性ツールのためのオンデバイス機械学習を含む人工知能機能をGalaxyデバイスに統合している。これらの機能は、画像認識、言語翻訳、バッテリー最適化などのタスクにニューラルネットワークモデルを活用している。同社の研究開発部門であるサムスンリサーチは、学術機関やAI研究所と協力して深層学習技術を進展させている。また、サムスンはOpenAIやAnthropicと提携し、AIを活用したテキスト要約や生成的な写真編集など、大規模言語モデルの機能をデバイスにもたらしている。これらの取り組みにより、サムスンはアップルやGoogle DeepMindを搭載したデバイスと競合する、消費者向けAIの主要プレーヤーとしての地位を確立している。
ファウンドリーとAIハードウェア
サムスンのファウンドリー事業は、データセンターで使用されるニューラルネットワークアクセラレーターを含む、AIワークロード向けの高度なチップを製造している。同社は、極端紫外線(EUV)リソグラフィーを使用して、3ナノメートルという微細なノードでチップを生産し、TSMCやインテルと競合している。サムスンのHBM製品は、NVIDIA GPUやその他のAIプロセッサーに使用されており、これらはAmazon Web Services、Azure、Google Cloudなどのクラウドプロバイダーによって展開されている。ファウンドリーはまた、カスタムAIチップ向けにブロードコムやArm Holdingsにもサービスを提供している。2023年、サムスンは、CerebrasやGroqシステム向けのチップを含む、AI半導体の需要増に対応するため、ファウンドリー能力を拡大する計画を発表した。
企業構造とグローバル展開
サムスン電子は、韓国の財閥に典型的な複雑な相互出資構造を持ち、外国人投資家が過半数を所有している。同社は76カ国に組立工場と販売網を展開し、韓国、中国、ベトナム、米国に主要施設を持つ。世界中で26万人以上の従業員を雇用している。サムスンの水原本社には、主要な研究開発と管理業務が置かれている。同社のガバナンスは、サムスングループの頂点としての役割に影響を受けており、リーダーシップには創業家である李一族のメンバーが関与することが多い。
財務実績と市場での地位
2023年時点で、サムスン電子は世界第4位のテクノロジー企業であり、時価総額は1兆250億米ドルで、世界第12位にランクされている。同社の収益は半導体部門によって牽引されており、特にメモリーの好況期には利益のかなりの部分を占めている。サムスンのスマートフォン事業は依然として販売台数で世界最大であるが、中国ブランドとの競争に直面している。同社のディスプレイ事業は、アップルやその他の顧客にOLEDパネルを供給している。サムスンの財務的安定性により、AI研究を含む研究開発に多額の投資を行い、競争力を維持することが可能となっている。
課題と今後の見通し
サムスンは、AI時代において、ファウンドリーでのTSMCやHBMメモリーでのSK Hynixとの激しい競争など、課題に直面している。同社はまた、規制上の監視や労働争議にも直面している。2024年、サムスンは、高度なパッケージングとAI専用チップに焦点を当て、半導体とAI能力を強化するため、5年間で2300億米ドルの投資計画を発表した。同社はまた、モバイルデバイス向けのニューラルネットワーク処理ユニット(NPU)を模索しており、オンデバイスAI性能の向上を目指している。AI需要が高まるにつれ、メモリーおよびファウンドリーサプライヤーとしてのサムスンの役割は引き続き重要であると期待されるが、地政学的緊張やサプライチェーンリスクを乗り越える必要がある。